AIライティングのやり方|1本書き上げるまでの全工程を実演
「記事を書いて」で返ってくる3000字には、自社の話がひとつも入っていません。企画メモの作り方から素材集め、構成、執筆、裏取り、タイトルまで、1本を書き上げる7工程をプロンプト全文つきで実演します。
1. 「AIで書けるはず」が、1本目で止まる
記事制作にAIを入れることになり、まず1本試すことになった。よくある始まり方です。
テーマを打ち込んで「記事を書いてください」と送る。数十秒で3000字が返ってくる。ここまでは順調です。読み始めて、手が止まります。
- 書かれていることは正しい。ただ、自社の話がひとつも入っていない
- 「重要です」「求められています」で終わる文が、段落ごとに出てくる
- 直したい箇所を指摘して書き直させると、直った代わりに別の箇所が崩れる
- 追記を頼むと全体の分量バランスが壊れ、また最初から生成し直しになる
- 気がつくと自分で書き直していて、3時間が経っている
- 上長に「結局どれくらい短縮できたのか」と聞かれ、答えられない
- 来月の担当者に手順を渡そうとしたら、渡せるものがチャット履歴しかない
「AIライティングのやり方」で検索すると、プロンプトのコツを並べた記事はいくらでも見つかります。ただ、1本を最初から最後まで書き上げる筋道を通しで書いたものは、意外と見当たりません。
この記事では、企画がまだ何も決まっていない状態から公開できる原稿になるまでを、7工程に分けて実演します。プロンプトは調整せずそのまま使える形にしてあります。
2. 詰まる原因は3つ
原因1:「書く」をひとつの作業だと思っている
人が記事を書くとき、実際には別々の判断を順番にこなしています。何のための記事か決める、素材を集める、使うものを絞る、並べる、書く、事実を確かめる、整える。少なくとも7つ、それぞれ独立した判断です。
「記事を書いてください」という指示は、この7つを1回のやりとりに畳み込んでいます。畳むと途中の判断が見えません。どの情報を採用してどれを捨てたのか、なぜその順番なのかが出力から読み取れない。だから部分的に直せず、丸ごと書き直しになります。
原因2:素材を用意する工程が抜けている
生成モデルは、渡されていない情報を書けません。書けないので、学習データの平均的な記述で埋めます。「どこにも自社の話がない」の正体はこれです。プロンプトの言い回しをいくら磨いても、素材が無ければ埋まりません。
原因3:成果物が会話の中にしか残らない
うまく書けたときも、残っているのはチャットの履歴だけです。次の記事でも、担当が交代したあとも、また同じ試行錯誤から始めることになります。個人の作業なら気になりませんが、複数人で月に何本も出すとなると、ここが最初に効いてきます。
3. 実演:1本を書き上げるまでの7工程
題材を決めます。ここでは架空の設定として、業務システムを提供する企業の広報担当が、社内で開いた技術勉強会のレポート記事を1本書く、という状況で進めます。自社の事例記事でも、採用広報でも、工程の構造は変わりません。
工程0:企画メモを1枚作る(AIに触る前)
先にこれを埋めます。所要10分です。ここを飛ばすと、以降の全工程がぶれます。
【企画メモ】
1. 記事の目的(1つだけ選ぶ)
□ 検索から新規訪問を取る □ 商談中の相手に読ませる
□ 採用の応募動機を作る □ 既存顧客の活用度を上げる
2. 想定読者(役職・会社規模・いま困っていること を1文で)
3. 読者がこの記事を読み終えたときの状態(1文・行動でなく状態で書く)
4. この記事でしか読めないこと(他社が書けない情報を1つ以上)
5. 文字数の目安
6. 公開先と、公開後に見る指標
7. 使ってはいけない表現・出せない情報
4番目が空欄のままなら、その企画はまだ記事になりません。書く前に素材を取りにいく判断ができるので、ここで止まるのはむしろ成功です。
7番目は組織で回すときに効きます。顧客名の扱い、数値の公開可否、競合への言及ルール。毎回口頭で確認していると、担当が変わったときに事故ります。
工程1:素材を集める
AIに書かせる前に、人が集めます。集める素材は3種類です。
一次情報。 社内でしか手に入らないもの。今回の題材なら、勉強会の録音か議事録、参加者数、扱ったテーマ、登壇者の所属と経歴、実際に出た質問、開催に至った経緯。事例記事なら顧客の発言、採用記事なら社員の言葉がこれに当たります。
社内の既存資料。 過去のプレスリリース、製品資料、これまでのブログ記事。表記ルールや言い回しの基準がここにあります。
外部の一般情報。 業界の前提や統計。ここだけはAIに探させても構いませんが、扱い方に条件をつけます。
以下のテーマについて、記事の前提として使える一般的な情報を整理してください。
【テーマ】(例:社内勉強会を継続する取り組みが増えている背景)
【出力形式】
| # | 事実または主張 | 情報源の種類 | 一次情報か | 確認の必要度 |
【条件】
・情報源の種類は「公的統計」「業界団体の調査」「企業の公表資料」「一般論」から選ぶ
・出典が特定できないものは、必ず「一般論」と明記してください
・数値を書く場合は、その数値の出典が特定できるものだけにしてください
特定できない数値は、数値を書かずに傾向だけ書いてください
・不確かなものを補って埋めないでください。分からないものは「不明」と書いてください
出力された表のうち、記事に使うのは「一次情報か=はい」で「確認の必要度=低」の行だけです。それ以外は、人が原典に当たってから使います。ここを緩めると、公開後に訂正することになります。
工程2:主張を1文に決める
素材が揃ったら、記事のゴールを先に確定します。
あなたは編集長です。以下の企画メモと素材をもとに、この記事の主張を決めてください。
【企画メモ】(工程0のメモを貼る)
【素材】(一次情報の要点を箇条書きで貼る)
【出力】
1. この記事が読者に持ち帰らせる主張を1文で(40字以内・断定形)を3案
2. 各案について、支えとなる素材を素材リストから列挙
3. 各案の弱点を1つずつ(何が足りないと読者に反論されるか)
4. 3案のうち、企画メモの目的にもっとも合うものと、その理由
【条件】
・「〜が重要だ」「〜が求められている」のような、誰でも言える形にしないでください
・素材に裏付けが1つも無い主張案は出さないでください
3案出させるのが要点です。1案だけだと良し悪しを判断できません。3つ並ぶと、この素材で言えることの輪郭が見えます。
工程3:構成を作る
決定した主張をもとに、記事の構成案を作ってください。
【主張】(工程2で選んだ1文)
【使える素材】(素材リストを番号つきで貼る)
【文字数】(例:5000字)
【出力形式】
■ リード文で書くこと(箇条書き3点)
■ 見出し構成
H2(1):
- この見出しで読者に渡すこと:
- 使う素材番号:
- 想定文字数:
(H2を4〜6本)
■ 締めで書くこと
【条件】
・見出しに「はじめに」「背景」「課題」「まとめ」「今後の展望」を使わない
・見出しは、それだけ読んで中身が想像できる具体的な文にする
・割り当てる素材番号が1つも無い見出しを作らない
・想定文字数の合計を指定の文字数に収め、重要な見出しに多く配分する
・時系列ではなく、読者が理解しやすい順に並べる
素材番号が割り当てられない見出しを禁止するのが効きます。この制約が無いと、話をつなぐためにAIが一般論の見出しを発明します。「どこにも自社の話がない記事」の主な入口はここです。
工程4:セクション単位で書く
全文を一括で書かせないでください。長い出力ほど後半で指示が守られなくなり、1箇所直すために全部を再生成することになります。
以下の1セクションだけを執筆してください。他のセクションは書かないでください。
【対象】H2(2):(見出しをコピペ)
【使う素材】(該当素材の原文をここに貼る)
【文字数】800字前後
【執筆ルール】
・貼った素材に含まれない事実・数値・固有名詞・社名を書かないでください
・発言を引用するときは「」で囲み、地の文と分けてください
整えてよいのはフィラー削除・言い直しの統合・語順の入れ替えまでです
・一文の長さを揃えないでください。短い文と長い文を混ぜてください
・「〜ではないでしょうか」「〜と言えるでしょう」を使わないでください
・接続詞(また・さらに・加えて)はこのセクションで2回までにしてください
・段落構成を「主張→理由→具体例→まとめ」の型で固定しないでください
・素材が足りず書けない箇所は、埋めずに【要素材】と書いて止めてください
最後の1行を必ず入れます。これが無いと、足りない部分を平均的な記述で埋めてきます。【要素材】が出たら、そこは人が取りにいく場所です。
工程5:事実の裏取り
公開前に必ず通す工程です。
以下の【記事本文】と【素材】を照合してください。
本文を一文ずつ確認し、次の表を出力してください。
| 本文の該当箇所 | 根拠となる素材番号 | 判定 |
判定は3種類:
・一致:素材に基づいて書かれている
・拡張:素材から推測はできるが、そこまでは書かれていない
・不明:対応する素材が見当たらない
【条件】
数値・固有名詞・日付・社名・役職名は、1つ残らず表に載せてください。
「拡張」と「不明」が1件も検出されなかった場合は、基準が甘い可能性が高いので、
もう一度厳しく見直して再出力してください。
「1件も無いなら見直せ」の一文が要点です。これを入れないと、ほぼ全部「一致」で返ってきます。出てきた「拡張」「不明」は、人が原典に戻って確認します。ここは自動化しないほうが安全な工程です。
公開前に何をどこまで確認するかの全体像は、AI記事の品質管理チェックリストに工程として整理されています。組織のルールに落とすときはそちらが参考になります。
工程6:整える
以下の文章を、意味を変えずに推敲してください。
【直す対象】
1. 隣り合う3文の長さがほぼ同じ箇所 → 長短のリズムをつける
2. 抽象語で終わる文(効率化・最適化・活性化・重要です・必要です)
→ 誰が何をするとどうなるか、が入った記述に書き換える
3. 主語が大きい文(企業は・多くの担当者は・現代においては)→ 主語を具体的にする
4. 同じ語尾が3回以上続く箇所
5. 装飾目的のダッシュ記号、ダブルクォーテーション
【触らない対象】
・「」で囲まれた引用 ・固有名詞、数値、日付
【禁止】
具体化のために、元の文章に無い数字や事実を作らないでください。
情報が足りず具体化できない箇所は、【要情報】と注記して残してください。
工程7:タイトル・リード・メタディスクリプション
最後に回すのが正解です。本文が固まってからのほうが、良いものが出ます。
以下の記事本文をもとに、次の3点を作ってください。
1. タイトル案を8本
- 32字以内。うち3本は数字を含める、3本は問いの形、2本は本文中の具体的な一文から引く
- 各案について、どの読者に刺さるかを一言で添える
2. リード文(200字前後)
- 1文目は読者の状況の描写から始め、記事を読むと何が分かるかを3文目までに書く
- 「本記事では〜について解説します」という書き出しを使わない
3. メタディスクリプション(120字前後)
- 記事の結論を含め、本文からの引き写しにしない
タイトルは、出てきた8本をそのまま使わないでください。良い案の言い回しと、別案の切り口を人が組み合わせるのが一番早いです。
所要時間と、次の1本に残すもの
慣れれば、素材が手元にある状態から下書きまで2時間前後です。素材集めを含めると半日規模になります。
そして、この1本を書き終えたときに残しておくものが3つあります。企画メモの雛形、工程ごとのプロンプト、そして工程6で使った禁止語のリスト。この3つをファイルにして共有フォルダに置けば、2本目は工程0から始められます。チャット履歴には残らないものを、意識して外に出しておくのが要点です。
工程ごとのプロンプトを型として持っておく考え方は、プロンプトエンジニアリング入門にテンプレートの形で整理されています。
4. それでも残る限界
この7工程を回せば、汎用LLMだけでも公開できる原稿になります。ただ、2本目、3本目と続けていくと別の壁が出てきます。
工程を毎回、人が運ぶ必要があります。 7工程それぞれでプロンプトを貼り、出力を確認し、次の工程に渡す。1本あたりのやりとりは20回を超えます。手戻りは確実に減りますが、拘束時間そのものは大きくは減りません。
出力が毎回ぶれます。 同じプロンプトと同じ素材でも、返ってくるものは毎回変わります。3本に1本は良く、1本は書き直し。締切のある運用では、この揺れが計画を崩します。
素材の質は工程の外にあります。 勉強会の録音が聞き取りにくい、参加者の発言が拾えていない、そもそも取材の質問が浅い。ここはプロンプトでは解けません。
渡せる形になりません。 うまく回している人の判断は、プロンプトの外側にあります。どの素材を捨てるか、3つの構成案からどれを選ぶか、【要素材】が出たときにどこまで取りにいくか。手順書を共有しても、この判断は移りません。担当が変わると水準が落ちて、結局その人しか回せなくなる。オウンドメディアや採用広報が特定の一人に依存して止まる、よくある形です。
本数が増えると比例して重くなります。 月1本なら回せます。月4本になると、7工程×4の運搬が発生します。ここで多くの体制が「AIを使うのをやめる」という結論に着地します。
限界の正体は、モデルの能力ではありません。工程は分解できたのに、工程と工程の受け渡しが人の手作業のまま残っていることです。
5. 工程を仕組みとして持つ
sonataは、この記事で分解した工程そのものを、プロダクトの構造にしたサービスです。音声をアップロードすると、事前のWeb調査、企画、文字起こし、構成、記事生成までが一連の流れとしてつながっていて、工程間の受け渡しを人がやらなくて済みます。この音声から記事化までの一連のワークフローについて特許を出願しています。
工程が分かれているので、企画だけ差し替える、構成だけ組み直すといった介入もできます。気に入らない箇所のために、全部をやり直す必要はありません。
そして、同じ工程を全員が通ります。誰が担当しても同じ順番で同じ判断ポイントを踏むので、担当が変わっても出力の水準が揃います。個人の作業が速くなるという話ではなく、工程が仕組みとして残るという話です。
無料で試せます。
まずは、次に出す1本で工程0の企画メモだけ書いてみてください。4番目の「この記事でしか読めないこと」が埋まるかどうかで、その企画がいま書ける記事なのかが分かります。
