ホワイトペーパーの構成案をChatGPTで作る
章立ては10分で出るのに、そこから3日止まる。原因は構成力ではなく、章を埋める材料を渡していないことです。社内の材料を棚卸しするプロンプト、3案出させて捨てる基準、埋まらない空欄の扱いまでを置きます。
この記事は、事業会社でオウンドメディアを回しながら、ダウンロード資料も自分で作っている人に向けて書いています。使うのは ChatGPT のような汎用のLLMだけです。貼ってそのまま使えるプロンプトを3本と、出てきた案を捨てる基準、そして「ここから先はLLMでは埋まらない」という境界線を順番に置きます。
先に結論を書きます。ホワイトペーパーの構成案は、LLMに頼めば10分で出ます。止まるのはその次で、原因は構成力ではありません。章の中に入れる材料——自社にしかない数字、現場の言葉、断り文句——を、こちらが渡していないからです。だから作業の順番を入れ替えます。章立てを考えるより先に、手元にある材料を棚卸しする。材料の量が決まってから章立てを作れば、書ける章しか立たないので、空欄が減ります。
何のために作るのか、どう位置づけるのかという考え方は「ホワイトペーパーとは?BtoBマーケティングでの作り方と効果」にまとまっています。ここでは、明日の午前中に手を動かすところだけを書きます。
章立ては10分で出る。止まるのはその次の3日間
「BtoB企業向けの資料の構成案を作って」と打てば、それらしい目次が返ってきます。表紙、課題提起、市場環境、解決策、導入の流れ、自社紹介、問い合わせ導線。7章ぶんの見出しが並び、各章に「ここでは〜を説明します」という一文まで付いてきます。
ここまでは誰がやっても同じ結果になります。実際、この工程で困っている人はあまりいません。手が止まるのは、その目次を開いて2章目を書き始めたときです。
「市場環境」の章に何を書くか。公開統計を引けば埋まりますが、それは読者が既に知っている話で、自社から出す意味がありません。「解決策」の章も同じで、一般論で書けば競合の資料と同じ文面になります。目次は共通でも、読む価値は章の中身にしか宿らない。 そして中身は、LLMの中には無い。
総務省の「令和7年版 情報通信白書」によれば、日本で何らかの業務に生成AIを使っていると答えた割合は55.2%、用途としては「メールや議事録、資料作成等の補助」が47.3%で最も多くなっています。同時に、導入時の懸念で最も多いのは「効果的な活用方法がわからない」でした(企業におけるAI利用の現状)。資料作成に使われているのに、使い方が分からないという声が残る。この落差が起きている場所が、ちょうど「目次は出たが中身が無い」地点です。
目次だけが立派になるのは、材料を渡していないから
なぜ材料を渡さないまま章立てから始めてしまうのか。ここを一段掘ります。
ひとつは、世の中の解説記事が「企画 → 骨子 → 原稿 → デザイン」の順で書かれているからです。この順番自体は間違っていません。制作会社に外注するなら、骨子を先に固めないと見積もりが出ないので、実務としても正しい。ただしこれは材料を持っている人が発注する前提の順番です。社内に取材済みの素材や過去の記事資産があり、それを再構成するなら骨子が先で構いません。
もうひとつは、LLMが「材料が無い」と言ってくれないことです。手元に何も無い状態で構成案を頼んでも、LLMは断りません。学習した一般論で全部の章を埋めて返してきます。返ってきた文章は日本語として整っているので、その場では欠落に気づけない。気づくのは、社内レビューで「これ、うちの話がどこにも書いてないね」と言われたときです。
Google は AI 生成コンテンツについて、制作方法ではなく品質で評価するという立場を示しつつ、検索順位の操作を主目的とした自動生成はスパムポリシー違反にあたるとしています(AI 生成コンテンツに関する Google 検索のガイダンス)。一般論で埋めた資料は、この線引きの手前にすら立てません。読んだ人が「これは自社では作れない」と感じる情報が1つも無ければ、フォームに個人情報を入れる理由が生まれないからです。
手元にある材料を15分で棚卸しする
先にやるのは棚卸しです。新しく取材する前に、すでに社内にあるものを数えます。探す先は5つで足ります。
- 過去1年のオウンドメディア記事(特に読まれた上位10本)
- 商談の議事録、または営業への同行メモ
- 問い合わせフォームとメールに届いた質問文
- 既存顧客との定例の議事録、解約時のやりとり
- 社内勉強会・登壇の資料と、その場で出た質問
このうち3つ以上から実物を集められれば、資料1冊分の材料は足ります。集めるのは要約ではなく原文です。「顧客は導入コストを懸念している」という要約は、既に情報が落ちた後の状態で、そこから戻せません。「初期費用より、運用が回るかどうかが不安です。今の担当が1人なので」という発言そのものを持ってきます。
集めた原文をLLMに渡し、章立ての前に「何が語れるか」だけを出させます。
以下は、当社に実際に届いた質問と、商談での発言をそのまま貼ったものです。
これらを読み、次の3つに分類して一覧にしてください。推測で項目を足さないでください。
A. 複数回くり返し出てくる論点(何回出たかも書く)
B. 1回しか出ていないが、具体的で強い言葉が使われているもの(原文を引用する)
C. こちらが説明しているのに、相手に届いていないと読み取れるもの
分類のあとに、「この材料だけでは答えられない質問」を別に列挙してください。
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(ここに原文を貼る)
最後の「答えられない質問」が重要です。ここに出てくるものが、後で空欄になる箇所です。
章立ては3案出させ、捨てる基準を先に決める
材料の一覧ができてから、初めて構成案を作ります。ポイントは1案ではなく3案出させることと、選ぶ基準を自分が先に言語化しておくことです。基準が無いまま3案並べても、読み比べて「なんとなく2案目」を選ぶだけになります。
基準は、この2つで足ります。
- 各章が、棚卸しで出たA/B/Cのどれに紐づいているか。 紐づかない章は、一般論しか書けない章です
- 読者が読み終えた直後に取る行動が、章の並びから決まっているか。 比較検討中の人に「入門」から始めさせると、途中で閉じます
添付の材料一覧(A/B/C分類)だけを根拠にして、資料の構成案を3案作ってください。
条件:
- 全体10〜15ページを想定し、各案とも章は5〜7個
- 各章に、根拠となる材料の番号(A-1、B-3 など)を必ず添える
- 材料が紐づかない章を作らない。埋められない場合は章の数を減らす
- 3案は「読者の検討段階」を変えて作る(情報収集中/比較検討中/稟議を書く直前)
- 各案の末尾に、その案では扱えない論点を書く
3案が出たら、章に材料番号が付いていない行を数えます。付いていない章が2つ以上ある案は、その時点で落とします。手元の材料では書けないという意味だからです。残った案の中から、いま集めたい相手の検討段階に合うものを選びます。
1ページ1メッセージに割り、図の指示書まで書かせる
章立てが決まったら、本文に進む前にページ単位に割ります。1ページに複数の主張を載せると、読み手はどこを持ち帰ればいいか分からなくなります。ページごとに「この1枚で言い切ること」を1文だけ決め、それ以外は図か脚注に落とします。
確定した構成案(下に貼る)を、1ページ1メッセージの単位に割ってください。
各ページについて、次の4つを表で出してください。
1. ページ番号と見出し(体言止めにしない。文で書く)
2. このページで言い切る1文(30字以内)
3. 本文に入れる要素(箇条書き3点まで)
4. 図の指示書:何と何を対比する図か/軸は何か/必要なデータ項目は何か
図の指示書は、デザイナーがこれだけを読んで描ける粒度で書いてください。
データが手元に無い図は「要データ収集」と明記し、想像で数字を置かないでください。
「想像で数字を置かないでください」は必ず入れます。これを書かないと、LLMはグラフの目盛りにそれらしい数値を勝手に置きます。資料の中で最も危険なのは、出どころの無い数字が図になって残ることです。 図になった瞬間に、読み手はそれを調査結果として受け取ります。
なお、ページ数は10〜15ページ前後を目安にしている解説が多く、それ自体に大きな異論はありません。ただし材料が5ページぶんしか無いなら、5ページで出して構いません。薄い15ページより、密度のある6ページの方が読み終えてもらえます。
空欄が残る。そこは取材でしか埋まらない
ここまで進めると、必ず空欄が残ります。「要データ収集」と書かれた図、答えられない質問として挙がった論点、B分類に1回しか出てこなかった強い言葉の背景。
この空欄は失敗ではありません。LLMを通したことで、社外に出せる情報と、人に聞かないと出てこない情報が分離できた状態です。 埋め方は3つしかありません。自社のデータを集計する、社内の詳しい人に聞く、顧客に聞く。どれも人と話す作業で、ここだけは短縮できません。
社内の詳しい人に30分もらえるなら、聞くべきことは既に手元にあります。空欄の一覧がそのまま質問票になるからです。ここで多くの人が詰まるのは、聞いた後です。録音は残るが文字にする時間が無く、結局その日のうちに書けなかった記憶だけで資料を埋めることになります。
sonata は、ここを担当する道具です。取材の前にインタビュイーの情報から想定設問リストと企画書を作り、当日はスマートフォンの録音で構いません。音声をアップロードすると文字起こしと話者の分離を行い、メディア設定を反映した原稿を作ります。チャットで「この部分をもっと具体的に」と指示すれば修正案が返り、テキストまたは Word 形式で書き出せます。書き出したものを、そのまま資料の該当ページに流し込む使い方になります。無料で試せます(クレジットカード不要)。
できないことも書いておきます。sonata は資料のデザインを組む道具ではありません。 ページのレイアウト、図版の作図、PDFの体裁は別の作業として残ります。あくまで「聞いた話を、資料に貼れる文章にするまで」を短くする道具です。
構成案づくりで詰まりやすいところ
構成案は何案作って比べるのが適切ですか?
3案です。1案だと比較の基準ができず、5案以上は読み比べるコストが選ぶ利益を上回ります。3案は「読者の検討段階」を変えて作り、各章に根拠となる材料の番号が付いているかで機械的に落とします。材料が紐づかない章が2つ以上ある案は、その場で捨てて構いません。
社内に材料がまったく無いときはどうしますか?
作る前に集めます。最短は、営業に同行して商談を1件録音させてもらうことです。1件でも、質問の言い回しと断り文句が原文で手に入れば、章の半分は埋まります。公開統計だけで作った資料は、読者にとって検索すれば出てくる情報の再配置になるため、フォームに情報を入力してまで読む理由になりません。
ChatGPTに本文まで全部書かせても問題ありませんか?
問題になるのは書かせること自体ではなく、根拠の無い記述が混ざることです。Google も制作方法ではなく品質で評価する立場を示しています。実務上の分かれ目は、事実にあたる箇所——数字、他社名、法令、自社の実績——を人が確認したかどうかです。確認できない箇所は、削るか「要確認」を残したまま社内レビューに出します。
ページ数と文字数はどれくらいが適切ですか?
10〜15ページ前後を目安にする解説が多く、出発点としてはそれで構いません。ただしページ数は結果であって目標ではありません。1ページ1メッセージで割り、材料が紐づくページだけを残した結果が6ページなら、6ページで出します。埋めるために一般論の章を足すと、その章から読者が離脱します。
作った資料は作り直しが必要ですか?
材料の側が更新されたときに直します。具体的には、よく届く質問が変わったとき、価格や提供範囲が変わったとき、引用した統計の最新版が出たときです。棚卸しの一覧(A/B/C分類)を残しておくと、どの章を直せばいいかが番号で辿れます。この一覧は作り終えたら捨てずに、資料と同じ場所に置いてください。
最初の1本は、社内にある議事録1本から始めるのが確実です。章立てから始めると10分で形になって3日止まりますが、材料から始めると、その日のうちに書ける章が決まります。
