社員インタビュー記事の書き方|候補者が読む順に組み立てる構成の型
一問一答で並べた社員インタビューが読まれないのは、取材の順番のまま書いているからです。候補者は自分に当てはめて読みます。時系列を捨てて判断の順に組み直す構成の型と、引用の整え方の線引きを、プロンプト全文つきで公開します。
社員インタビュー記事が読まれないのは、文章力の問題ではありません。取材で聞いた順番のまま書いているからです。話し手は思い出した順に話し、読み手は自分に当てはめられる順に読みます。この2つの順番は一致しません。書き手の仕事は整えることではなく、並べ替えることです。並べ替えの軸は、候補者が入社を判断するときに通る問いの順に取ります。この記事では、一問一答から抜け出す構成の型と、引用をどこまで整えてよいかの線引きを、プロンプト全文つきで出します。
1. 一問一答のまま公開して、読まれていない
取材はうまくいきました。文字起こしもできました。あとは記事にするだけです。
質問と答えを順番に並べ、読みやすく整えて公開します。そして、読まれません。
- 見出しが「入社のきっかけ」「現在の仕事」「今後の目標」で、どの記事も同じ形になっている
- 候補者が最初に知りたいことが、記事の後半に置かれている
- 発言が丁寧に整えられすぎて、話し手の顔が見えない
- 3本並べると、誰のインタビューか分からなくなる
採用サイトの記事は、候補者が就業中の移動時間に開くものです。冒頭の数行で「自分に関係がある」と思えなければ閉じられます。取材の順番のまま並べた記事は、たいてい自分語りの導入から始まっているので、その数行を使い切ります。
原因は、文章の巧拙ではありません。並べ替えという工程を飛ばしていることです。
2. なぜ、取材の順番のままだと読まれないのか
原因1:話し手の時系列と、読み手の関心の順が違う
取材では、入社前から現在へ時系列で聞きます。話し手には自然な順です。
読み手は違います。候補者はまず「この人は自分と近いか」を見て、次に「入ったら何を任されるか」を見て、最後に「続けられそうか」を見ます。時系列とは無関係の順です。入社のきっかけから始まる記事は、候補者にとって3番目に関心のある情報から始まっています。
原因2:見出しが記事の分類名になっている
「入社のきっかけ」「現在の仕事」「今後の目標」は、記事の中身ではなく箱の名前です。箱の名前だけを見ても、中に何が入っているかは分かりません。
見出しは、それだけ読んで内容が想像できる文にします。「入社のきっかけ」ではなく「前職では触れなかった領域に、3ヶ月目で手を出した」。読み飛ばす人にも情報が渡ります。
原因3:発言を整えすぎて、その人でなくなる
フィラーを削り、言い直しを統合し、語順を直す。ここまでは必要な作業です。行き過ぎると、全員が同じ話し方をする記事になります。
残すべきなのは、その人の言い方の癖です。「なんかこう、ぐっと来る感じで」という言い回しは、整えると消えます。消してはいけない場所を先に決めておくと、判断が速くなります。
原因4:全部を入れようとしている
45分の取材から取れる素材は、記事1本には多すぎます。実際に使う発言は全体の2割程度です。全部を入れると、話題は網羅されて印象が残らない記事になります。
捨てる作業を意識的にやるかどうかで、記事の密度が変わります。
3. 汎用LLMで組む、構成の型
ここからが実践です。汎用LLMを使い、素材の一覧化から構成、執筆、点検までを工程に分けます。
ステップ1:発言を一覧にする(要約させない)
いきなり「記事にして」と渡さないでください。要約は情報を捨てる作業で、何を捨てたかが残りません。
以下はインタビューの文字起こしです。記事は書かないでください。
発言のインデックスだけ作ってください。
【出力形式】
| ID | 発言の要旨(40字以内) | 種別 | 具体度 | 候補者の判断に効くか |
・種別:事実 / 数値 / エピソード / 本音 / 背景説明 / 対比
・具体度:高(固有名詞・数値・時期が入る)/ 中 / 低
・「候補者の判断に効くか」:◎○△で
【厳守】
・言い換えないでください。要旨は本人の語をなるべく残してください
・文字起こしに無い情報を推測で足さないでください
・判断に迷った発言は、捨てずに「具体度:低」で残してください
【文字起こし】
(貼る)
40〜60行の表ができます。これが以降の全工程の土台です。文字起こし全文を何度も読み返す必要がなくなります。
ステップ2:候補者の問いの順に、並べ替えの軸を決める
ここが構成の核です。時系列を捨てます。
あなたは採用広報の編集者です。以下の発言インデックスをもとに、
候補者が読む順に構成を組み直してください。
【読ませたい候補者】現職の規模・職種・年次・いま迷っていること:
【この記事で渡したいこと】1文:
【発言インデックス】(表を貼る)
【出力】
候補者が記事を読みながら通る問いを、順番に4〜6個並べてください。
各問いについて、次を出してください。
| 順 | 候補者の問い(一人称の話し言葉で) | 答えになる発言ID | 見出し案 |
【条件】
・問いは「この人は自分と近いか」から始めてください
・「会社の魅力は何か」のような、候補者が実際には抱かない問いを入れない
・見出し案は、それだけ読んで内容が想像できる具体的な文にする
・「入社のきっかけ」「現在の仕事」「今後の目標」を見出しに使わない
・答えになる発言IDが1つも無い問いは、削るか、別の問いに置き換える
発言IDが割り当たらない問いが出たら、そこは取材で聞けていません。無理に埋めず、削ります。埋めようとすると、話していないことをAIが一般論で補います。
ステップ3:構成案を3つ出させて、1つ選ぶ
先ほどの問いの並びをもとに、記事の構成案を3パターン作ってください。
【出力形式(各案)】
■ 何を軸に並べたか(一言)
■ リード文で書くこと(箇条書き3点)
■ 見出し構成
H2(1):
- この見出しで候補者に渡すこと:
- 使う発言ID:
- 想定文字数:
(H2を4〜6本)
■ 締めで書くこと
【条件】
・3案の軸を変えてください(例:候補者の疑問順 / 1日の流れ軸 / 転職前後の対比軸)
・想定文字数の合計を3000字に収める
・重要な見出しに文字数を多く配分する
・全案で、使う発言IDの合計が全体の3割を超えないようにしてください
3割の上限を入れるのが要点です。制約が無いと、全部の発言を使う構成が返ってきます。捨てた発言は、SNS投稿や別記事の素材として取っておけます。
ステップ4:引用の整え方を決めてから書く
執筆前に、どこまで整えてよいかを決めます。3段階で管理すると判断が速くなります。
| 段階 | 何をするか | 使いどころ |
|---|---|---|
| 逐語 | フィラーも言い直しもそのまま | 感情が乗った短い一言、その人らしい言い回し |
| 整文 | フィラー削除、言い直しの統合、語順の入れ替えまで | 引用の大半 |
| 地の文化 | 内容を書き手の言葉で要約して地の文に | 背景説明、前提の共有 |
やってよい操作は、フィラーの削除、言い直しの統合、助詞の補い、語順の入れ替え、方言や口癖の温存です。やってはいけないのは、意味の追加、断定度を上げること、離れた発言をつなげて1つの発言に見せること、話していない数値や固有名詞の補完です。
この線引きを決めたうえで、見出し単位で書かせます。
以下の1セクションだけを執筆してください。他のセクションは書かないでください。
【見出し】(コピペ)
【この見出しで候補者に渡すこと】
【使う発言】ID:7, 11, 19(原文を貼る)
【文字数】600字前後
【引用ルール】
・引用は「」で囲み、地の文と明確に分ける
・整えてよいのは、フィラー削除・言い直しの統合・助詞の補い・語順の入れ替えまで
・話し手の口癖や言い回しの癖は残す
・意味を足す、断定度を上げる、離れた発言をつなげる、は禁止
・貼った発言に含まれない事実・数値・固有名詞を書かない
【文章ルール】
・一文の長さを揃えない。短い文と長い文を混ぜる
・「〜ではないでしょうか」「〜と言えるでしょう」を使わない
・「風通しが良い」「挑戦できる」「成長できる」など、どの会社でも書ける語を使わない
・段落構成を「主張→理由→具体例→まとめ」の型で固定しない
一括で全文を書かせないでください。長い出力ほど後半で指示が守られなくなり、1箇所直すために全体を作り直すことになります。
ステップ5:リード文を最後に書く
リード文は本文が固まってから書きます。先に書くと、本文がリードの予告に引きずられます。
以下の本文に対するリード文を3案作ってください。
【本文】(全文を貼る)
【読ませたい候補者】
【条件】
・各案150字以内
・1案目:候補者が抱えている状況の描写から入る
・2案目:本文中でいちばん具体的な事実から入る
・3案目:本人の発言の引用から入る
・「〜さんに話を聞きました」で終わる形にしない
・会社の宣伝文を入れない
3案並べると、この記事にどの入り方が合うかが見えます。1案だけだと判断できません。
ステップ6:原文と照合し、候補者の目で読む
公開前に2つ通します。
【記事本文】と【発言原文】を照合してください。
本文を一文ずつ見て、次の表を出力してください。
| 本文の該当箇所 | 根拠となる発言ID | 判定 |
判定は3種類:一致 / 拡張(話者はそこまで言っていない)/ 不明(対応する発言が無い)
【条件】
「拡張」と「不明」を必ず洗い出してください。
1件も検出されなかった場合は、確認が甘い可能性が高いので、
もう一度厳しい基準で見直して再出力してください。
続けて、候補者の目で読ませます。
この原稿を、転職を検討している候補者の立場で読んでください。
【出力】
1. 冒頭150字を読んだ時点で、読み進める気になるか(なる / ならない)とその理由
2. 読んだあとも残る疑問(5つ)
3. 「どの会社でも書ける」と感じた文を、原文のまま3つ引用
4. この記事から伝わる、この会社で働くことの具体像を3行で
【条件】
褒めないでください。改善案も要りません。上の4つだけ出してください。
3で引用された文は削ります。4が抽象的にしか書けないなら、素材の具体度が足りていません。
公開前の確認をひとつ。 記事の中で労働条件に触れる場合は、募集要項と食い違わないようにしてください。職業安定法は、求人や労働者の募集に関する情報について虚偽の表示と誤解を生じさせる表示を禁じ、正確かつ最新の内容に保つ措置を求めています(令和4年職業安定法の改正について)。
4. それでも残る限界
この型を回せば、汎用LLMだけでも読める社員インタビュー記事になります。続けると、別の問題が出ます。
1本あたりのやりとりが20回を超えます。 6ステップそれぞれでプロンプトを貼り、出力を確認し、次に渡す。手戻りは減りますが、下書きまで半日という感覚は大きくは変わりません。
長い取材が入りきりません。 60分の取材は1万5千字前後です。工程が進むにつれてインデックス、構成、本文が積み上がり、最初に渡した原文が実質的に参照されなくなります。分割すれば入りますが、分割した時点で全体を見た並べ替えの判断ができなくなります。
記事ごとにトーンが揺れます。 同じプロンプトでも出力は毎回変わります。採用サイトは記事が並ぶ場所なので、3本並べたときの不揃いが候補者に見えます。
判断が引き継がれません。 どの発言を捨てたか、なぜこの軸で並べたか。それはチャットの中にあり、次の担当者には渡りません。手順書を共有しても、判断の基準は移りません。
限界の正体は、AIの能力ではありません。工程は分解できたのに、工程と工程の受け渡しが人の手作業のまま残っていることです。
5. 受け渡しごと仕組みにする
sonata は、この記事で分解した工程そのものをプロダクトの構造にしたサービスです。音声をアップロードすると、文字起こしと同時に章立てと引用候補が抽出され、構成、初稿までが一連の流れとしてつながります。工程間の受け渡しが自動で進むので、インデックスを作り直したり、構成を貼り直したりする手間がありません。この音声から記事化までの一連のワークフローについて特許を出願しています。
工程が分かれているので、構成だけ組み直す、特定の見出しだけ書き直すといった介入もできます。書き出しは HTML と Markdown なので、採用サイト、WordPress、Wantedly、採用管理ツールへそのまま貼れます。
Freeプランは期間無制限で、月1記事まで無料です。
まずは、手元にある文字起こしでステップ1のインデックスだけ作ってみてください。1万5千字が50行の表になった時点で、どの発言で記事を組むかが見えます。
6. よくある質問
Q. 一問一答形式は、使ってはいけないのですか
形式そのものが悪いわけではありません。問題は、取材の順番のまま並べることです。一問一答で行くなら、質問の並びを候補者の関心順に組み替え、質問文自体も見出しとして機能する具体的な文に書き換えてください。読み飛ばす人が質問文だけを追っても、記事の内容が渡る状態にします。
Q. 記事の長さはどれくらいが適切ですか
3000字前後で足ります。長さより、捨てた割合のほうが効きます。取材で得た発言の3割以上を使っていたら、詰め込みすぎのサインです。読者にとって情報が多いほど良いわけではありません。
Q. 写真は何枚必要ですか
顔写真1枚と、業務中の様子が1枚あれば成立します。枚数より、記事の内容と対応しているかが効きます。デスクワークの話をしている記事に、会議室で腕を組んだ写真だけが並んでいると、内容と像が結びつきません。撮影が難しい場合は、音声のみの取材で記事を作り、写真は後日足す進め方もできます。
Q. 本人確認で大幅に直されてしまいます
完成原稿だけを送っているのが原因のことが多いです。引用箇所について、発言の原文と記事での表現を並べた表を添えてください。どこを整えたかが見えると、指摘は表現の好みではなく事実確認に集中します。構成案の段階で一度見てもらうのも有効です。
Q. AIで書いた採用記事は、検索で不利になりますか
制作方法そのものでは判断されません。Google は、AIによる制作かどうかではなくコンテンツの品質で評価する方針を示しています(AI 生成コンテンツに関する Google 検索のガイダンス)。実際の社員に取材した記事は、経験に基づくコンテンツとして構造的に強い側にあります。
出典・参考
- 厚生労働省「令和4年職業安定法の改正について」— 求人等に関する情報の的確な表示の義務化(令和4年10月1日施行)。虚偽表示・誤解を生じさせる表示の禁止。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000172497_00003.html
- Google 検索セントラル「AI 生成コンテンツに関する Google 検索のガイダンス」(2023年2月8日)— 制作方法ではなく品質で評価する方針。https://developers.google.com/search/blog/2023/02/google-search-and-ai-content?hl=ja
- Google 検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」— E-E-A-T の「経験(Experience)」の位置づけ。https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/creating-helpful-content?hl=ja
