採用広報の効果測定|「記事を出したが効いているのか分からない」を解く指標設計
採用広報の効果が見えないのは、PVを見ているからです。記事が効くのは母集団形成ではなく、選考中の候補者の意思決定です。面接での言及を数える方法から、応募経路と記事の突き合わせまで、明日から取れる指標設計をまとめました。
採用広報の効果が見えないのは、測る指標を間違えているからです。PVや滞在時間は、記事が読まれたことしか教えてくれません。採用記事が実際に効くのは母集団形成ではなく、選考中の候補者が迷っている場面です。だから測るべきは、面接での言及、辞退理由の変化、内定承諾までに読まれた記事の本数になります。どれもアクセス解析より先に、面接の場と選考記録から取れます。この記事では、明日から始められる測り方と、数字を打ち手に変える読み方を出します。
1. 記事は出しているが、効いているのか分からない
採用サイトの記事を、半年で6本出しました。担当者としては手応えがあります。社内でも読まれています。
そして、説明できません。
- 経営会議で「で、応募は増えたのか」と聞かれて答えられない
- PVは月2,000あるが、その中に候補者が何人いるのか分からない
- 応募数は増えたが、求人媒体の出稿も増やしているので切り分けられない
- 手応えはあるのに、来期の予算を確保する材料が無い
採用広報は、予算を切られやすい領域です。効果が説明できないまま2年目に入ると、たいてい縮小されます。そして縮小した年に採用がうまくいかなくても、因果は証明できません。
原因は、測定の仕組みが無いことではありません。採用記事が効く場所と、見ている指標がずれていることです。
2. なぜ、PVでは説明できないのか
原因1:採用記事は母集団形成の道具ではない
求人媒体やスカウトは、候補者に見つけてもらう仕組みです。採用記事は違います。すでに自社を知った人が、応募するかどうか、選考を続けるかどうかを判断するときに読まれます。
つまり効果が出るのは、入口ではなく途中の離脱率です。PVを追っても、この変化は見えません。
原因2:読者の大半が候補者ではない
採用サイトのPVには、社員、取引先、競合、報道関係者、既存の求職者以外が含まれます。分母に候補者以外が大量に入っている数字で、候補者への効果は測れません。
原因3:応募経路の記録が「Web」で止まっている
応募管理では経路を記録しています。ところがその粒度が「自社サイト」「求人媒体」「紹介」で止まっていることが多く、どの記事を読んだかまでは残りません。候補者は媒体で見つけて、自社サイトの記事を読んでから応募していることがあります。この経路は記録に現れません。
原因4:効果が出るまでの時間が長い
記事を読んでから応募するまで、数ヶ月かかることがあります。転職の検討期間そのものが長いからです。月次でPVと応募数を並べても、相関は出ません。
3. 明日から取れる、4つの指標
ここからが実践です。ツールの導入を待たずに始められる順に並べます。
指標1:面接での言及(いちばん先に取る)
面接の冒頭に1問足すだけで取れます。
面接の冒頭で候補者に聞く質問を作ってください。
【目的】採用サイトのどの記事が、応募や選考継続の判断に効いたかを知る
【制約】
・1問だけ。面接の本題に入る前の30秒で終わる
・候補者に「読んでいないと不利」と思わせない言い方にする
・記事を読んでいない候補者にも答えられる形にする
【出力】
質問文を3案。それぞれ、返ってくる答えの例を1つずつ添えてください。
聞いた内容は、選考記録に1行で残します。「どの記事に触れたか」「触れなかったか」の2値だけで足ります。3ヶ月で30件たまれば、どの記事が効いているかが見えます。
これがいちばん強い指標です。PVより人数は少ないですが、分母が全員候補者だからです。
指標2:辞退理由の変化
選考辞退の理由を記録している場合、その内訳の変化を見ます。
記事は、特定の不安を解くために書きます。「入社後の立ち上がりが不安」という辞退理由に対して記事を出したなら、その理由の構成比が下がったかを見ます。全体の辞退率ではなく、狙った理由の構成比です。
以下の辞退理由データから、採用広報で打ち手が取れる項目を抽出してください。
【辞退理由の記録】(選考段階・理由・件数を貼る)
【出力】
| 辞退理由 | 件数 | 選考段階 | 記事で解けるか | 解けるなら、必要な記事の切り口 |
【条件】
・「他社に決まった」のような、記事では解けない理由も除外せず、
「解けない」と明記してください
・記事で解ける理由については、候補者が実際に抱いている疑問の形で
切り口を書いてください
・件数の多い順ではなく、記事で解ける度合いの高い順に並べてください
この表があると、次に書く記事が決まります。効果測定が、そのまま企画になります。
指標3:内定承諾までに読まれた本数
内定を出した候補者に、承諾の前後で聞きます。「選考中、採用サイトはご覧になりましたか」「どのあたりを読まれましたか」。
承諾者と辞退者で、読んだ本数に差があるかを見ます。母数は少なくても、差が出れば意思決定への寄与が示せます。年間の採用人数が10名程度でも、2年分ためれば傾向は見えます。
指標4:記事ごとの流入と、その後の行動
ここでアクセス解析を使います。ただし見るのはPVではありません。
- 記事から求人一覧・エントリーフォームへ遷移した割合
- 検索からの流入で、記事のタイトルに対応する検索語
- 同一訪問者が読んだ記事の本数
3つ目が効きます。1本だけ読んで離れた人と、3本読んだ人では、検討の深さが違います。複数本読まれている記事の組み合わせが分かると、次に書く記事の順番が決まります。
4つをまとめて、月次の1枚にする
採用広報の月次レポートの項目を設計してください。
【取れているデータ】
・面接での記事言及:
・辞退理由の内訳:
・内定承諾者の閲覧状況:
・アクセス解析:
【前提】
・報告先:経営会議(採用の専門家ではない)
・報告時間:5分
・目的:来期の予算判断の材料にする
【出力】
1. レポートに載せる項目(5つまで)と、それぞれの定義
2. 各項目について、「良い / 悪い」を判断する基準
3. 載せない項目と、その理由
4. 3ヶ月分たまるまで判断できない項目に付ける注記の文言
【条件】
・PVを主指標に置かないでください
・「認知度が向上した」のような、検証できない表現を使わないでください
3の「載せない項目」を出させるのが効きます。項目が多いレポートは読まれず、読まれないレポートは予算を守れません。
記載内容の確認をひとつ
効果測定とは別に、記事の記載が募集要項と食い違っていないかを定期的に確認してください。職業安定法は、求人や労働者の募集に関する情報について虚偽の表示と誤解を生じさせる表示を禁じ、正確かつ最新の内容に保つ措置を求めています(令和4年職業安定法の改正について)。過去記事の労働条件の記述は、制度変更のたびに見直す対象になります。
4. それでも残る限界
4つの指標を回せば、採用広報の効果は説明できるようになります。続けると、別の問題が出ます。
集計が手作業で残ります。 面接での言及は面接官が記録し、採用担当が集計します。月に30件でも、転記と集計で数時間かかります。忙しい月から記録が抜け始め、抜けた月のデータは戻りません。
面接官によって記録の粒度が違います。 「サイトを見たと言っていた」で終わる人と、記事名まで残す人がいます。粒度が揃わないと集計できません。
記事の本数が少ないと判断できません。 月2本の運用では、指標がたまるまで半年かかります。効果測定の仕組みだけ作っても、測る対象が足りません。
測定が企画に戻りません。 辞退理由から次の切り口が見えても、記事にする工程は別に立ち上がります。測って、決めて、また企画からやり直す。この往復が毎回発生します。
限界の正体は、測定の精度ではありません。測る仕組みと作る仕組みが分かれていて、その間の受け渡しが人の手作業のまま残っていることです。
5. 作る側の工程を、止まらない形にする
測定を活かすには、記事を出し続けられることが前提になります。月2本が出せない体制では、指標がたまる前に運用が止まります。
sonata は、採用記事の制作工程そのものをプロダクトの構造にしたサービスです。企画の切り口づくり、被取材者に合わせた設問の用意、依頼メールのドラフト、音声のアップロード、構成、初稿までが一連の流れとしてつながっていて、工程間の受け渡しが自動で進みます。この音声から記事化までの一連のワークフローについて特許を出願しています。
辞退理由から見えた切り口を、そのまま企画に入れて次の記事に回せます。書き出しは HTML と Markdown なので、採用サイトや採用管理ツールへそのまま貼れます。
Freeプランは期間無制限で、月1記事まで無料です。
まずは、次の面接から1問だけ足してみてください。30件たまった時点で、どの記事が効いているかが見えます。
6. よくある質問
Q. PVは見なくてよいのですか
補助指標としては見てください。主指標に置かないという話です。PVの分母には候補者以外が大量に含まれるため、候補者への効果を示せません。PVが役に立つのは、検索からの流入が伸びているかを見るときや、記事の公開直後に技術的な問題が無いかを確認するときです。
Q. 面接で記事について聞くと、読んでいない候補者に失礼になりませんか
聞き方で回避できます。「弊社のサイトで、目に留まったものはありましたか」のように、読んでいなくても答えられる形にしてください。読んでいないという回答も、そのまま指標になります。読まれていない記事があるという事実が分かるからです。
Q. 応募数と記事の因果は、どう示せばよいですか
因果の証明は難しく、証明しようとすると測定が重くなります。示すべきなのは、選考中の候補者の意思決定に寄与したかどうかです。面接での言及率、辞退理由の構成比の変化、承諾者と辞退者の閲覧差。この3つが揃えば、経営会議で説明できる材料になります。
Q. 採用人数が少なく、母数が足りません
年間10名規模でも、2年分ためれば傾向は見えます。母数が足りない期間は、定量ではなく定性の記録を厚くしてください。面接で候補者が記事のどの部分に触れたかを、発言のまま残します。10件の具体的な発言は、100件の集計値より打ち手に変わります。
Q. 記事のSEO評価は、どう見ればよいですか
採用記事は検索流入を主目的にしないことが多いので、順位は補助指標です。見るなら、社名や職種名との組み合わせ検索での表示回数を追ってください。指名検索で自社の記事が上位に出ているかは、候補者の判断に直結します。制作方法そのもので評価が変わることはありません(AI 生成コンテンツに関する Google 検索のガイダンス)。
出典・参考
- 厚生労働省「令和4年職業安定法の改正について」— 求人等に関する情報の的確な表示の義務化(令和4年10月1日施行)。虚偽表示・誤解を生じさせる表示の禁止と、正確かつ最新の内容に保つ措置。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000172497_00003.html
- 厚生労働省「職場情報の提供制度」— 若者雇用促進法に基づく青少年雇用情報の3類型。候補者が求める情報の分類として使える。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000122234.html
- Google 検索セントラル「AI 生成コンテンツに関する Google 検索のガイダンス」(2023年2月8日)— 制作方法ではなく品質で評価する方針。https://developers.google.com/search/blog/2023/02/google-search-and-ai-content?hl=ja
