採用サイトのコンテンツが更新されなくなる理由と、月2本を止めずに出す運用の型
採用サイトを作ったときの記事のまま止まっている。原因はやる気ではなく、1本ごとに企画から始める設計にあります。候補者の意思決定から逆算した企画在庫の作り方と、依頼・取材・執筆の型を、プロンプト全文つきで公開します。
採用サイトの更新が止まるのは、担当者の意欲や文章力の問題ではありません。1本ごとに「誰に何を書くか」をゼロから考える設計になっていて、その企画コストが毎回まるごとかかるからです。止めずに出している会社は、記事単位ではなく企画在庫の単位で運用しています。候補者の意思決定から逆算して10本分の企画を先に作り、あとは取材と執筆だけを回す。この記事では、その企画在庫の作り方と、依頼・取材・執筆それぞれの型を、汎用LLMでそのまま使えるプロンプトつきで出します。
1. 「最新記事:1年前」で止まっている
採用サイトは立ち上がっています。制作会社に依頼して、社員インタビューが3本、代表メッセージが1本。公開したときは社内でも話題になりました。
そこから、更新が止まります。
- 最新記事の日付が1年前で、候補者に見られていると思うと気が重い
- 「そろそろ何か出さないと」と思うが、誰に何を書くかから決められない
- 社員に取材を依頼するところで止まり、そのまま2ヶ月経つ
- 面接で「サイトを見ました」と言われるが、話題に出るのはいつも同じ1本
採用広報の担当者は、たいてい採用の実務と兼務です。母集団形成、説明会、日程調整、面接、内定者フォロー。記事は締切がないので、締切のある仕事に必ず負けます。四半期に1本出れば良いほうで、その1本も「そろそろ出さないと」から始まるので、企画から取材から執筆まで一気に負荷がかかります。
止まっている理由を「時間がないから」で片づけると、来期も同じ場所で止まります。時間の総量ではなく、1本あたりにかかる立ち上げコストの高さが効いています。
2. なぜ、2本目以降が出てこないのか
原因1:1本ごとに企画から始めている
3本出したあと、4本目で必ず「次は誰に何を聞こうか」が発生します。ここが毎回ゼロベースです。人選、切り口、質問、依頼文。記事を書く時間より、書く前の判断に時間がかかっています。
企画が在庫として存在していれば、この立ち上げは消えます。止めずに出している会社と止まる会社の差は、書く速さではなく、企画が手元にあるかどうかで説明がつきます。
原因2:記事の目的が「会社紹介」になっている
多くの採用記事は、会社を良く見せることを目的に書かれています。すると内容は「風通しが良い」「挑戦できる」「若手も活躍」に収束します。どの会社でも書ける内容なので、候補者の判断材料になりません。
候補者が知りたいのは、良い会社かどうかではありません。自分がそこで働いたらどうなるかです。入社1年目の1日、任される範囲、評価のされ方、辞めた人が辞めた理由。判断に使える情報は具体的で、たいてい少し不都合を含みます。
原因3:取材相手への依頼が重すぎる
「インタビューさせてください」という依頼は、受け手にとっては見積もりのつかない仕事です。何を聞かれるのか、どれくらい時間を取られるのか、変なことを言ったら公開されるのか。断られないまでも、日程調整が後回しになります。
依頼の時点で、所要時間、聞くこと、公開前に本人が確認できること、この3つが書いてあると返事の速さが変わります。
原因4:書く人が固定されていて、その人が忙しい
記事化まで担当者ひとりが抱えていると、その人の繁忙期にコンテンツが止まります。採用広報の繁忙期は採用の繁忙期と重なるので、いちばん記事を出したい時期にいちばん出せません。
3. 汎用LLMで組む、止まらない運用の型
ここからが実践です。ChatGPT や Claude といった汎用LLMを使って、企画在庫・依頼・取材・執筆・公開後の判断まで工程として組みます。プロンプトはそのまま貼って使える形にしてあります。
ステップ1:候補者の意思決定から企画を逆算する
記事のネタを考えるのをやめます。代わりに、候補者が入社を決めるまでに通る判断を並べ、その各段階で足りない情報を洗い出します。
あなたは採用広報の企画者です。以下の会社の候補者が、応募から入社承諾までに
通る判断を段階に分け、各段階で候補者が持つ疑問を洗い出してください。
【会社の前提】
・事業内容:
・採用したい職種と人数:
・想定する候補者の現職(規模・職種・年次):
・選考フロー:
・競合になりやすい会社の特徴:
【出力形式】
| 段階 | 候補者の疑問(一人称の話し言葉で) | それに答える記事の切り口 | 語れる社員の条件 |
【条件】
・段階は「認知」「応募検討」「一次面接後」「最終面接後」「内定後」の5つ
・疑問は各段階4つ以上。「働きやすいか」のような抽象語ではなく、
「残業が多い月はどれくらいか」のように、答えが具体的になる形で書く
・候補者が口には出しにくい不安(給与、評価、退職者、上司との相性)も必ず含める
・記事の切り口は、それだけ読んで内容が想像できる文にする
20〜25個の切り口が出ます。これが企画在庫です。1年分あります。
この表を作る目的は、ネタを増やすことではありません。どの記事が今いちばん効くかを、候補者の詰まっている段階から判断できるようにすることです。一次面接後の辞退が多いなら、その段階の疑問に答える記事から作ります。
ステップ2:在庫から今期の3本を選ぶ
全部は作れません。選ぶ基準を先に決めます。
先ほどの企画一覧から、次の3ヶ月で作る3本を選んでください。
【今の採用の状況】
・母集団は足りているか:
・どの選考段階でいちばん離脱しているか:
・直近で候補者から実際に聞かれた質問(あれば3つ):
・取材に協力してもらえそうな社員(名前は不要、職種と年次だけ):
【出力】
1. 選んだ3本と、その順番の理由
2. それぞれ、取材相手に求める条件(職種・年次・経験)
3. 今回は見送る企画のうち、惜しいもの3つと見送る理由
【条件】
・「まず代表インタビューから」のような定番順にしないでください。
いま離脱が起きている段階に効く順にしてください
・3本のうち少なくとも1本は、候補者が口に出しにくい不安に答えるものにしてください
見送る理由を出させるのが効きます。判断の履歴が残るので、次の四半期に選び直すときにゼロから考えずに済みます。
ステップ3:依頼メールを、断られない形にする
取材相手が返事をしやすい情報を全部入れます。ここを丁寧にやると、日程調整の往復が減ります。
社員インタビューの依頼メールを書いてください。
【前提】
・依頼相手:(職種・年次・普段の忙しさ)
・記事の目的:(ステップ2で決めた切り口)
・所要時間:45分
・収録方法:(オンライン / 対面)録音します
・公開先:自社採用サイト
・公開前に本人確認あり。掲載可否は本人が最終判断できる
・撮影:(あり / なし。なしの場合はその旨)
【出力】
本文200〜300字。以下を必ず含める
・なぜこの人に頼むのか(他の誰でもよい書き方をしない)
・当日聞くことの見出しを3つ
・所要時間と、事前準備が不要であること
・公開前に本人が確認・修正できること
・断ってもよいこと
【条件】
・「ご多忙のところ恐縮ですが」のような定型の前置きから始めないでください
・熱意を伝える表現を足さないでください。判断に必要な情報だけを並べてください
「断ってもよい」と書くのを省かないでください。書いておくと、渋々受けて内容の薄い取材になる事態を避けられます。
ステップ4:質問を15問+深掘り型で用意する
当日の質問は、事前に作り込みます。詳しい設計は社員インタビューの質問リストの作り方で扱うので、ここでは最小限の形を出します。
以下の企画で、45分の社員インタビューの質問リストを作ってください。
【企画】(切り口をコピペ)
【相手】(職種・年次・入社経緯)
【この記事で候補者に渡したいこと】
【出力形式】
| # | 質問 | 狙い | 答えが浅かったときの追撃質問 |
【条件】
・15問。前半は事実、後半は判断や感情を聞く順に並べる
・「やりがいは何ですか」のような、良い答えが返ってくる質問を入れない
・具体的な場面を思い出させる形にする
(例:「直近3ヶ月でいちばん時間を使った仕事は何ですか」)
・追撃質問は、抽象的な答えが返ってきた前提で書く
・最後に、聞いてはいけない質問(プライバシー・家族・思想信条・病歴)を
注意事項として列挙する
ステップ5:録音から、書き起こしを経て初稿にする
取材は録音します。文字起こしはツールに任せて、そこから先を工程に分けます。全文をまとめて「記事にして」と渡すと、話していないことが混ざります。
以下はインタビューの文字起こしです。記事は書かないでください。
発言のインデックスだけ作ってください。
【出力形式】
| ID | 発言の要旨(40字以内) | 種別 | 具体度 | 候補者の判断に効くか |
・種別:事実 / 数値 / エピソード / 本音 / 背景説明
・具体度:高(固有名詞・数値・時期が入る)/ 中 / 低
・「候補者の判断に効くか」:◎○△で
【厳守】
・言い換えないでください。要旨は本人の語をなるべく残してください
・文字起こしに無い情報を推測で足さないでください
【文字起こし】
(貼る)
インデックスができたら、そこから使う発言を選んで構成を作り、見出しごとに書かせます。一括で全文を書かせないでください。長い出力ほど後半で指示が守られなくなり、直したい1箇所のために全体を作り直すことになります。
以下の1セクションだけを執筆してください。他は書かないでください。
【見出し】(コピペ)
【使う発言】ID:4, 9, 12(原文を貼る)
【文字数】600字前後
【引用ルール】
・引用は「」で囲む
・整えてよいのは、フィラー削除・言い直しの統合・助詞の補いまで
・意味を足す、断定度を上げる、離れた発言をつなげる、は禁止
・貼った発言に無い数値・固有名詞を書かない
【文章ルール】
・一文の長さを揃えない
・「〜ではないでしょうか」「〜と言えるでしょう」を使わない
・「風通しが良い」「挑戦できる」のような、どの会社でも書ける語を使わない
ステップ6:公開前に、書けていない情報を1つ足す
書き上がった原稿を、候補者の目で点検します。
この原稿を、転職を検討している候補者の立場で読んでください。
【出力】
1. この記事を読んで解消される疑問(3つまで)
2. 読んだあとも残る疑問(5つ)
3. 「どの会社でも書ける」と感じた文を、原文のまま3つ引用
4. 2で挙げた疑問のうち、この取材の素材で答えられそうなもの
【条件】
褒めないでください。改善案も要りません。上の4つだけ出してください。
3で引用された文は削ります。4で見つかった穴は、取材相手に追加で1問だけ聞けば埋まることが多いはずです。
注意点をひとつ。 採用記事に書く労働条件は、募集要項と食い違わないようにしてください。職業安定法は、求人や労働者の募集に関する情報について、虚偽の表示と誤解を生じさせる表示を禁じ、正確かつ最新の内容に保つ措置を求めています(令和4年職業安定法の改正について)。記事の中で「残業はほとんどない」と書いたら、その表現が実態と募集要項の両方に合っているかを確認します。
4. それでも残る限界
この型を回せば、汎用LLMだけで採用記事は出せます。続けていくと、別の問題が出てきます。
立ち上げコストは下がりますが、工数は思ったほど減りません。 6ステップそれぞれでプロンプトを貼り、出力を確認し、次に渡す。1本あたりのやりとりは20回を超えます。取材から公開まで、実作業で半日から1日という感覚は大きくは変わりません。
トーンが記事ごとに揺れます。 同じプロンプトでも出力は毎回変わります。3本並べたときに、文体も見出しの粒度もばらばらになります。採用サイトは記事が並ぶ場所なので、この揺れが候補者に見えます。
判断がチャットの中に消えます。 どの発言を捨てたか、なぜこの構成にしたか。その判断はチャット履歴の中にあり、次の担当者には渡りません。手順書を共有しても、判断の基準は移りません。担当者が変わると品質が変わります。
繁忙期に止まる構造は変わりません。 工程を分けても、全工程を人が起動して繋ぐことに変わりはありません。採用の山が来れば、記事はまた止まります。
限界の正体は、AIの能力ではありません。工程は分解できたのに、工程と工程の受け渡しが人の手作業のまま残っていることです。
5. 受け渡しごと仕組みにする
sonata は、この記事で分解した工程そのものをプロダクトの構造にしたサービスです。企画の切り口づくり、被取材者に合わせた設問の用意、依頼メールのドラフト、音声のアップロード、構成、初稿までが一連の流れとしてつながっていて、工程間の受け渡しが自動で進みます。この音声から記事化までの一連のワークフローについて特許を出願しています。
工程が分かれているので、企画だけ差し替える、構成だけ組み直すといった介入もできます。気に入らない箇所のために全部やり直す必要はありません。書き出しは HTML と Markdown なので、自社の採用サイト、WordPress、Wantedly、採用管理ツールへそのまま貼れます。
Freeプランは期間無制限で、月1記事まで無料です。手元にある取材音源を1本入れて、この記事の型を自分で回した結果と並べてみるのが、いちばん判断が早いと思います。
まずは、ステップ1の企画表だけ作ってみてください。20行の表が手元にできた時点で、次に何を書くかで悩む時間が消えます。
6. よくある質問
Q. 採用サイトの記事は、月に何本出せばよいですか
本数の目標から決めないでください。候補者がいちばん離脱している選考段階に効く記事が1本あるかどうかが先です。目安として月2本を続けられる体制が作れれば、四半期で6本、切り口の重複なく回せます。本数だけを追って中身の薄い記事を量産すると、大規模に生成されたコンテンツの不正使用として検索評価を落とす可能性があります(Google スパムに関するポリシー)。
Q. 社員インタビュー以外に、何を出せばよいですか
候補者が判断に使う情報を、社員の語り以外からも出せます。選考フローの各段階で何を見ているか、評価制度の実際の運用、入社後3ヶ月の立ち上がり方、部署の1週間の動き方。若者雇用促進法では、新卒者の募集を行う企業に対し、応募者等から求めがあった場合に、募集・採用に関する状況、職業能力の開発・向上に関する状況、職場定着に関する状況の3類型それぞれについて1つ以上の情報提供が義務づけられています(職場情報の提供制度)。この3類型は、記事の切り口としてもそのまま使えます。
Q. 記事を出しても候補者に読まれている実感がありません
読まれた本数ではなく、面接での言及を数えてください。面接の冒頭で「サイトのどの記事を読みましたか」と1問足すだけで、どの記事が判断に効いたかが分かります。アクセス解析より先に、この定性の記録から始めるほうが打ち手に変わります。
Q. 社員が顔出しを嫌がる場合はどうしますか
音声のみの取材で記事は成立します。氏名をイニシャルにする、職種と年次だけ出す、写真を後ろ姿や手元にする、といった選択肢を依頼の時点で提示してください。本人の顔写真や氏名を公開する場合は、利用目的を伝えたうえで本人の同意を取ります(個人情報保護委員会 法令・ガイドライン等)。退職時の扱いも、依頼の時点で決めておくと後で揉めません。
Q. AIで書いた採用記事は、検索で不利になりますか
制作方法そのものでは判断されません。Google は、AIによる制作かどうかではなくコンテンツの品質で評価する方針を示しています(AI 生成コンテンツに関する Google 検索のガイダンス)。不利になるのは、実際の社員に取材していない一般論の記事です。取材音源という一次情報を持っている採用記事は、この点で構造的に有利です。
出典・参考
- 厚生労働省「令和4年職業安定法の改正について」— 求人等に関する情報の的確な表示の義務化(令和4年10月1日施行)。虚偽表示・誤解を生じさせる表示の禁止と、正確かつ最新の内容に保つ措置。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000172497_00003.html
- 厚生労働省「職場情報の提供制度」— 若者雇用促進法に基づく青少年雇用情報の3類型(募集・採用に関する状況/職業能力の開発・向上/職場定着)。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000122234.html
- Google 検索セントラル「スパムに関するポリシー」— 大規模に作成されたコンテンツの不正使用。https://developers.google.com/search/docs/essentials/spam-policies?hl=ja
- Google 検索セントラル「AI 生成コンテンツに関する Google 検索のガイダンス」(2023年2月8日)— 制作方法ではなく品質で評価する方針。https://developers.google.com/search/blog/2023/02/google-search-and-ai-content?hl=ja
- 個人情報保護委員会「法令・ガイドライン等」— 個人情報の取得・利用目的の通知と本人同意の取扱い。https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/
