採用広報コンテンツの外注費用と、内製に切り替える分岐点
社員インタビュー1本の外注は数万円から数十万円まで幅があります。金額が読めないのは見積もりの分解単位がばらばらだからです。何にいくら払っているのかを工程で分解し、内製に切り替えるべき条件を数字で判断する方法をまとめました。
社員インタビュー記事の外注費用が読めないのは、相場が不透明だからではありません。見積もりの分解単位が会社ごとに違い、同じ「1本いくら」の中に含まれる工程が揃っていないからです。企画・取材・撮影・執筆・修正回数・写真の権利。この6つを分けて比べると、金額の差の大半は説明がつきます。そして内製に切り替える分岐点は、単価ではなく本数と修正回数で決まります。この記事では、費用を工程で分解する見方と、内製化の判断を数字で行う手順を出します。
1. 見積もりが3社で3倍ちがう
採用広報を強化することになりました。社員インタビューを外注しようと、3社に見積もりを取ります。
金額が揃いません。
- A社は1本5万円、B社は15万円、C社は「まずは企画から」で見積もりが出てこない
- 安いほうに頼んだら、取材は電話30分で、原稿は社内の説明資料の焼き直しだった
- 高いほうは満足したが、月3本のペースでは年間の予算に収まらない
- 修正が2回までと後から知り、3回目から追加費用が発生した
比較できないまま、既存の取引先に頼むか、いちばん安いところに頼むかで決めることになります。そして翌年、同じ検討をまた最初からやり直します。
金額が読めない原因は、値付けの不透明さではありません。見積書に書かれている「記事制作一式」の中身が、会社ごとに違うからです。
2. なぜ、比較できないのか
原因1:1本の中に含まれる工程が揃っていない
社員インタビュー1本には、少なくとも6つの工程があります。企画(誰に何を聞くか決める)、取材の調整と依頼、取材の実施、撮影、執筆、修正対応。
安い見積もりは、たいてい企画と調整が含まれていません。「質問リストと取材相手はご用意ください」という前提で、執筆だけを請けています。高い見積もりは企画から入っています。同じ「1本」でも、頼んでいる範囲が違います。
原因2:修正回数の条件が書かれていない
採用記事は、本人確認と人事の確認が入ります。実際には2回では終わりません。修正回数の上限と超過時の単価が書かれていない見積もりは、実質的に金額が確定していません。
原因3:写真の権利と再利用の条件が曖昧
撮影した写真を、採用サイト以外にも使うかどうか。会社説明会のスライド、パンフレット、SNS、採用媒体。利用範囲が広がると追加費用が発生する契約と、買い取りの契約があります。ここを確認せずに進めると、使いたいときに使えません。
原因4:単価だけを見て、社内工数を数えていない
外注しても、社内の作業はゼロになりません。取材相手の選定と依頼、日程調整、事実確認、人事の確認、掲載作業。安い外注ほど社内工数が増えます。ここを数えずに単価だけを比べると、判断を間違えます。
3. 費用を工程で分解し、内製の判断を数字にする
ステップ1:見積もりを、同じ表に並べ直す
各社の見積もりを、工程ごとに分解して並べます。書かれていない項目は「含まれない」として扱ってください。
| 工程 | 含まれるか | この工程の社内工数 |
|---|---|---|
| 企画(切り口・質問設計) | ||
| 取材相手への依頼・日程調整 | ||
| 取材の実施(時間・オンライン可否) | ||
| 撮影(カット数・レタッチ・権利範囲) | ||
| 執筆(文字数) | ||
| 修正(回数上限・超過単価) | ||
| 事実確認・本人確認の対応 | ||
| 入稿・掲載作業 |
汎用LLMに整理させると速く済みます。
以下は、社員インタビュー記事の制作について3社から受け取った見積もりです。
工程ごとの比較表を作ってください。
【見積もりA】(貼る)
【見積もりB】(貼る)
【見積もりC】(貼る)
【出力】
1. 工程ごとの比較表(含まれる / 含まれない / 記載なし の3値で)
2. 「記載なし」の項目について、発注前に確認すべき質問
3. 各社の見積もりを、同じ範囲に揃えたときの想定金額
(不足する工程を他社の単価で補って試算し、その前提を明記する)
4. 金額差のうち、工程の違いで説明がつく部分と、つかない部分
【厳守】
・見積もりに書かれていない金額を推測で埋めないでください。
試算する場合は、どの数字をどこから持ってきたかを明記してください
3が出た時点で、比較できる状態になります。多くの場合、金額差の大半は工程の違いで説明がつきます。
ステップ2:社内工数を、時間で数える
外注費用に、社内の人件費を足します。ここを飛ばすと判断が狂います。
社員インタビュー記事1本にかかる社内工数を、工程ごとに見積もってください。
【前提】
・外注範囲:(ステップ1で確定した範囲)
・社内で対応する工程:
・担当者の時給換算:(年収 ÷ 2000 で概算)
・確認に関わる人数:(人事 / 広報 / 本人 / 上長)
【出力】
| 工程 | 担当 | 所要時間 | 人件費換算 |
最後に、外注費 + 社内人件費 の1本あたり総額を出してください。
【条件】
・確認の待ち時間ではなく、実作業の時間で見積もってください
・修正のやりとりは、往復回数 × 1回あたりの時間で計算してください
外注費5万円の記事が、社内工数を入れると9万円になることがあります。この総額で比べないと、安い外注が本当に安いのかが分かりません。
ステップ3:内製に切り替える分岐点を計算する
内製化の判断は、単価ではなく本数と修正回数で決まります。
内製化と外注の分岐点を計算してください。
【外注の場合】
・1本あたり外注費:
・1本あたり社内工数(時間):
・修正の平均往復回数:
【内製の場合(AIツールを使う想定)】
・ツールの月額:
・1本あたりの社内工数(時間):
・立ち上げにかかる初期工数(時間):
【共通】
・担当者の時給換算:
・想定する年間本数:
【出力】
1. 年間本数を 6 / 12 / 24 / 36 本としたときの、両者の年間総額
2. 内製が外注を下回る本数の境界
3. 初期工数を回収するまでに必要な本数
4. 金額以外に、内製化で変わること・失われること(各3つ)
【条件】
・4では、内製化のデメリットも書いてください。
品質の揺れ、担当者への依存、撮影が必要な案件への対応などを含めてください
4を必ず出させてください。金額だけで決めると、撮影が必要な案件で詰まります。
ステップ4:内製・外注・併用の切り分けを決める
全部を内製にする必要はありません。工程で切り分けるのが現実的です。
| 案件の性質 | 向いている形 |
|---|---|
| 月次で回す社員インタビュー | 内製。本数が効くのでツールの費用対効果が出る |
| 経営陣のメッセージ、周年など | 外注。撮影と演出の比重が大きい |
| 撮影が必須の案件 | 撮影のみ外部、記事は内製 |
| 突発の1本(急な採用強化など) | 内製。外注は発注から納品まで数週間かかる |
撮影については、記事制作と切り離して考えてください。音声のみの取材でも記事は成立します。写真が必要な案件だけ、フォトグラファーを個別にアサインする形にすると、記事の単価を下げたまま見栄えを保てます。
記載内容についての注意。 内製・外注いずれの場合も、記事に書く労働条件は募集要項と食い違わないようにしてください。職業安定法は、求人や労働者の募集に関する情報について虚偽の表示と誤解を生じさせる表示を禁じ、正確かつ最新の内容に保つ措置を求めています(令和4年職業安定法の改正について)。外注する場合も、この責任は発注側に残ります。
4. それでも残る限界
工程で分解して比べれば、発注の判断はできます。内製に切り替えたあと、別の問題が出ます。
立ち上げの工数を過小に見積もりがちです。 企画の型、質問リスト、執筆のルール。これを作るのに実質2〜3本分の工数がかかります。1本目を作りながら型も作ることになるので、最初の数本は外注より時間がかかります。
品質が担当者に依存します。 外注のいちばんの価値は、品質が契約で担保されることです。内製にすると、担当者の慣れによって品質が変わります。慣れた人が異動すると、そこで止まります。
繁忙期に止まります。 外注は、こちらが忙しくても進みます。内製は止まります。採用の繁忙期といちばん記事を出したい時期が重なるので、この影響は小さくありません。
撮影は内製できません。 記事は内製化できても、撮影は別の技能です。全案件を内製にしようとすると、写真のない記事が並ぶことになります。
限界の正体は、AIの能力ではありません。工程は分解できたのに、工程と工程の受け渡しが人の手作業のまま残っていることです。
5. 受け渡しごと仕組みにする
sonata は、この記事で分解した工程そのものをプロダクトの構造にしたサービスです。企画の切り口づくり、設問の用意、依頼メールのドラフト、音声のアップロード、構成、初稿までが一連の流れとしてつながっていて、工程間の受け渡しが自動で進みます。この音声から記事化までの一連のワークフローについて特許を出願しています。
工程が製品側に固定されるので、担当者が変わっても手順が残ります。立ち上げの型を自分で作る工数が要りません。料金は Starter が月額19,800円で月3本まで、1本あたり6,600円以下です。1本10万円前後の外注と比べると、月次で回す記事についてはコスト構造が変わります。
撮影については、sonata は音声から記事化までを担当するツールなので、撮影機能は持っていません。撮影が必要な案件では、フォトグラファーをアサインできる rondo を組み合わせる形をご案内できます。
Freeプランは期間無制限で、月1記事まで無料です。判断の前に、手元の音源で1本だけ試して、外注に出した記事と並べてみてください。
6. よくある質問
Q. 社員インタビュー1本の外注相場はいくらですか
範囲によって変わるため、単一の相場では答えられません。執筆のみなら数万円台、企画から撮影まで含めると十数万円台になります。相場を調べるより、6つの工程のうちどれを頼むのかを決めてから見積もりを取るほうが早く決まります。同じ範囲で揃えれば、各社の差は説明できる範囲に収まります。
Q. 修正回数は何回で契約すべきですか
採用記事は本人確認と人事確認が入るため、3回は見ておいてください。2回上限の契約は、実務では超過します。超過時の単価を必ず確認し、見積もり総額に3回分を含めた金額で比較してください。
Q. 内製化すると、何本目から得になりますか
外注単価、社内工数、想定本数で変わります。ステップ3の計算を自社の数字で行ってください。目安として、月2本以上を1年続ける前提なら、内製の総額が下回ることが多くなります。年6本以下なら外注のほうが、社内の負荷を含めた総額で有利になる場合があります。
Q. AIで内製すると、記事の質は落ちますか
工程を分けずに一括生成させると落ちます。企画、設問、取材、構成、執筆、確認を分けて回せば、外注に近い水準まで持っていけます。ただし、一次情報のない記事は何を使っても質が上がりません。取材をせずにAIで書いた採用記事は、大規模に作成されたコンテンツの不正使用として検索評価を落とす可能性もあります(Google スパムに関するポリシー)。
Q. 撮影だけ外注することはできますか
できます。記事は内製し、写真だけフォトグラファーに依頼する切り分けは現実的です。音声のみの取材でも記事は成立するので、撮影の日程が取れない案件は記事を先に公開し、写真を後から足す進め方もできます。
出典・参考
- 厚生労働省「令和4年職業安定法の改正について」— 求人等に関する情報の的確な表示の義務化(令和4年10月1日施行)。虚偽表示・誤解を生じさせる表示の禁止と、正確かつ最新の内容に保つ措置。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000172497_00003.html
- Google 検索セントラル「スパムに関するポリシー」— 大規模に作成されたコンテンツの不正使用。https://developers.google.com/search/docs/essentials/spam-policies?hl=ja
- Google 検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」— E-E-A-T の「経験(Experience)」の位置づけ。https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/creating-helpful-content?hl=ja
