導入前の課題 — 提案の質が、担当者ごとに違った
同社は教育機関向けの学習管理システムを提供している。営業チームは12名。全国の学校法人を担当エリアで分担する体制を取っていた。
課題は、提案内容が担当者の経験に強く依存していたことだった。ベテランが担当する案件は決まるが、入社1〜2年目のメンバーが担当すると、同じ規模の学校法人でも商談が前に進まない。
— 具体的には、どのような差が出ていたのでしょうか。
提案書に載せる内容が違うんです。ベテランは「この規模の学校なら、まず出欠管理から入る」という勘所を持っている。若手はどうしても機能を全部並べた提案になってしまって、相手に刺さらない。本人たちも努力しているので、なおさら仕組みの問題だと感じていました。
— 改善は試みていたのですか。
勉強会は月1回やっていました。ただ、口頭で共有したノウハウは3ヶ月もすると薄れてしまう。形に残す必要があると分かってはいたものの、資料をまとめる時間が誰にもありませんでした。
「本人たちも努力しているので、なおさら仕組みの問題だと感じていました。」
検討 — 「作る」より「残す」を優先した
同社が最初に検討したのは、営業支援ツールの導入だった。しかし議論を進めるうち、必要なのは案件管理ではなく、うまくいった提案の中身を言語化して残す仕組みだという結論に至る。
— 導入事例記事という形を選んだ理由は。
お客様の言葉で「なぜ導入したか」「導入して何が変わったか」が書かれていれば、それがそのまま提案の材料になります。社外向けのコンテンツを作りながら、社内のノウハウも溜まる。一石二鳥だと考えました。
— 外部への委託は検討しましたか。
見積もりは取りました。1本あたり数万円台後半から、内容によっては10万円を超える。品質には納得できたのですが、私たちが必要としていたのは年間20本以上でした。予算が合いませんでした。
導入 — 最初の1本は、社内の練習台から
運用は、既存顧客への取材から始めた。1本目は社内向けの練習として、営業メンバー自身にインタビューする形を取ったという。
— 立ち上げで工夫した点はありますか。
いきなりお客様に取材を申し込むのではなく、まず社内で1本作りました。質問の組み立て方や、録音のしかたを試す場が必要だったので。3人がかりで半日、それで型が掴めました。
— 実際の取材はどのような流れでしたか。
オンライン会議を録画して、その音声をそのままアップロードします。取材時間は40分ほど。翌朝には初稿ができているので、事実確認をして、お客様に確認をお願いする。取材から公開まで、いまは平均で10日ほどです。
「取材から公開まで、いまは平均で10日ほどです。」
効果 — 数字と、それ以上に変わったこと
導入から半年で、Webサイト経由の問い合わせは3倍に増えた。ただし同社が手応えを感じているのは、別の変化のほうだという。
— 問い合わせが3倍というのは、事例記事だけの効果でしょうか。
正確に言えば、事例記事の公開と同じ時期に展示会にも出ています。だから記事だけの成果とは言い切れません。ただ、問い合わせフォームの「弊社を知ったきっかけ」で導入事例を挙げる方が明確に増えました。
— 現場の変化はいかがですか。
若手が商談で事例記事を開くようになりました。「御社と近い規模の学校で、こういう入り方をしています」と具体的に話せる。提案書を一から作る時間も半分近くに減りました。何より、勉強会で口頭共有していたものが、読み返せる形で残るようになったのが大きいです。
これから
同社は現在、月2本のペースで事例記事を制作している。今後は業種別・規模別に記事を揃え、商談の初期段階で渡せる資料としての整備を進める計画だ。